地域博物館 

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 私は県立博物館のすぐ近くで高校時代を過ごし、いつしか博物館で働くことにあこがれていた。そのころの学芸員のイメージは、薄暗くひんやりした空間で、貴重な文化財に囲まれて専門の研究に励むというものだった。当時、沖縄には市町村立の博物館はほとんどなく、国立、県立クラスの大きなものが本物の博物館だと思い込んでいた。
 ところが、大学で博物館学の第一人者である加藤有次先生の講義を受け、博物館に対する考えが一変した。加藤先生からは、地域博物館こそが重要であり、地域文化を創造する使命があるのだと教えられた。

 1980年代から今日までに、沖縄にも多くの地域博物館が建設されたが、人員の配置や予算の制約などから十分に機能を発揮している博物館は少ない。
 地域づくりには、地域博物館が重要な役割を果たすべきである。



地域博物館の役割と使命

「なぜ同じような博物館を、各地域ごとに必要とするのかを、真剣に問い直してみることこそ問題である。各地域ごとに博物館を必要とすることは、いかなる小都市、いかなる小地域であっても、そこには地域としての特質があり、それらの郷土地域には、数百年、数千年の永い歴史的風土によって培われた、それぞれの特質が築かれている。つまり、郷土という地域あるいは風土が形成されて、特有な文化が創造されているのであるから、この風土と文化を保存し、未来社会のために活用し、新しい文化を創造し育成しなければならない使命があるのである。この使命は、郷土地域住民の義務であるということができるのである。」

  加藤有次『博物館学序論』 雄山閣出版 1977年



「地域博物館の目的理念は、ふるさと創生への使命はもちろんのこと、その地域住民が過去からいかなる自然的風土を培って、長い間、衣・食・住を通じた暮らしをして、歴史的風土を築いてきたかを、地域住民が博物館で学習し、地域における生き方、まち造りの方法等、その他未来にかけての創造をよりよく促進させることであり、これが博物館の果たすべき使命である。そのために、地域の学術的研究、あるいはそれを学際的研究方法論によって、地域学を樹立して、はじめて地域博物館が物質文化を媒体とした生涯学習や研究者のセンター的機能として確立するものと考える。」

  加藤有次「日本の博物館の風土とこれからの博物館」
      『情報と教育』1997年11月号



「博物館の存在性は、一自治体において、病院や学校等が必要であると同様に重要なのである。そして地域社会における博物館の使命は、明るい未来社会を創造させることにある。例え他の地域から移住して来た市民であっても、その子供はそこで育ち、そしてその地は彼らにとってのふる里となるのである。ふる里を皆でよいものにするためには、自然的・歴史的風土を築いてきた様相を学習することが大切である。そしてその学習の場としての博物館が必要となるのである。各地域において個性あふるる特色が内在しているものである。その発見が地域社会における生涯学習の一つである。そしてその学習効果は、日本人に馴染まなかった自然保護思想や文化財保護思想を十分理解させることとなるのである。
 市史編さんは、地域の人々の自然的風土と歴史的風土にかかわる情報資料の収集の成果である。しかし最後にその学術的情報資料のセンター的機能をもたせた博物館が完成することで、本当の意味での市史編さん事業が完了するといえるのではないだろうか。」

  加藤有次「地域博物館の目的理念及び建設要件に関する一考察」
      『國學院大學博物館学紀要 第21輯』1997年



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